読書:ラン

「ラン」森絵都・著。
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年末に「一瞬の風になれ」を読んで楽しかった。
小説っていいな。
特に「走る」題材がいいなーと思っていたら、書店にこの本があったので読んでみた。
おもしろい!

走る理由は人それぞれ。
健康とダイエットが一番だが、この本の主人公は実に奇想天涯な理由で走ることになった。仲間達の理由もまたおもしろい。

ひょんなことからフルマラソンを走ることになってしまった主人公と仲間達は決して順調ということはなく、むしろ様々な困難に向き合うことで成長していく。

おかしくて、それでいてホロリとさせる。

いろいろな場面で心に残る言葉あるが、雑誌の取材に答える真知栄子のシーンがおもしろい。

「明日はどうかいいレースをして、全国の主婦ランナーたちに感動を与えてください」
熱く語り上げた渡瀬さんに、真知栄子は涼しく言い返した。
「いやよ」
「え」
「私の感動は私だけのものよ。だれにも寄生させやしない」

という文章が、あまりに自己中心的で、心に響いた。人間は常に自己中心的なものを持っている。大人になると、それを外に出さないだけだ。

42.195kmを走り切るというのは、きれいごとなんかじゃなくて、本当に辛い。それを走り切るのは、「誰かに感動を与えるため」なんかじゃない。

私たちは、必死で走る。走り続ける。

この作家の、他の本も読んでみたくなった。