カーペンターズを聴きながら

少し遅いランチ。
窓側の席。
本を開く。

店内に、カレン・カーペンターの声が、おだやかに、のびやかに、広がる。
本に目を落としながら、聴き入る。

1970年代。
ロック全盛時代に私が一番好きなのは、カーペンターズだった。

その声を聴いた瞬間に「なんだこの声は!」と驚き、
それまで、森昌子、桜田淳子、山口百恵を中心に歌謡曲を聴いていた田舎の娘に衝撃が走ったのであります。

買ってもらったばかりのラジカセで毎日聴いた。でも、ロックのンギャァーーーという音に比べてそれは、あまりにも美しく、そしてヒットしすぎていた。私は素直に「カーペンターズが好き!」と言えなかった。

レストランの中に、静かな音量で流れるその歌を、全部知っている!

隣の席に、若いお嬢さん3人組が座る。
会社の愚痴を言っている。
派遣社員。
腹にすえかねる事態が発生したらしく、「こんなことなら辞めてやる」勢いで話している。

相撲界では、大麻を吸ったことでロシア人力士が解雇された。「私は絶対にやっていない」とカメラに向って言ったあの言葉は何だったのか。

食品業界では、「事故米」を食品用として売った三笠フーズ。これまでの食品偽装の中でも最も悪質と思われる事態。これが焼酎や酒にも混ざっていることで被害は拡大の一途。

1970年代に、30年後にはそんな時代が来るなんて、予想さえしなかった。明日はもっと良くなると思っていた。

豊かさを求めて生きてきたはずなのに、
豊かさって、何だろう?

それにしても、カレン・カーペンターの声は、深くて暖かい。