読書:一生懸命って素敵なこと

「一生懸命って素敵なこと」林文子・著。

ダイエーの代表取締役会長兼CEOに抜擢された林さんの著書。TVで何度か拝見していて、前から気になっていた方。
「女性初」という冠がいくつもある。女性初のフォルクスワーゲン社長、BMW社長、他にも多々。

きっとエリート中のエリートだろう、と勝手な先入観を持っていた。意外にも林さんの学歴は高卒だ。都立青山高校卒業後は大手企業のOLとして働く。

林さんは昭和21年生まれで、私の15歳年上。
その当時のOL生活は、私達の短大卒のOL時代となんら変わらないことに驚いた。

女性の仕事は、お茶くみと掃除とコピー取りがメイン業務で、数年、働いた後は社内の人と寿退社することが定番。えー、まったく同じジャン。

林さんは、そんなOL生活に満足しなかったんですねー、何かが違うと思って、いわゆる結婚ではなく転職という道を進む。

今も月に一度はダイエーの「朝市」で実際にお客様と接しているという林さんによって、ダイエーは再生するに違いない、そういう印象を受けた。

林さんが最初に着手したことは、

私がダイエーの会長となって真っ先に取り組んだのは、全国のダイエー店舗を視察し、必要に応じて労働環境を改善することだった。(中略)具体的には、店舗の従業員専用のトイレをきれいにすることから手がけた。

こういう視点は、女性らしいと思う。特に女性の多い職場では、こういうことが「やる気」に直結する。男性がトップにいる間は気がつかないかもしれない。

林さんが最初に社長に抜擢された時に「なぜ私でしょうか?」という質問にフォルクスワーゲン・ジャパンのイギリス人社長は

「うちの社員をぜひ幸せにしてください」と言われる。私は、「クルマをもっと売ってほしい」ではなく、「社員を幸せにしてほしい」と言われたことに感動した。

それっすよね。ウルウル。私の経営理念も「ハッピーライフ」でござんす。

それにしても、社長という仕事は面白い。これほど面白い仕事はない。なにしろ、すべての責任は自分一人にかかってくる。プレッシャーも大きいが、やはり喜びもそれだけ大きい。社長業はプロデューサーでありディレクターであり、まさにコーディネーターでもある。社長がオールマイティである必要はない。それぞれ社員の持つ得意技を集めて、組み合わせてやっていけばいいのだ。そして、社員のみんなが働きやすい環境を一生懸命つくってあげればいいのである。

読書:ウェブ進化論

「ウェブ進化論」梅田望夫・著。

ブログとかPodcastとか、そういったことを総称して「Web2.0」と言われている。それは、その世界にいる人間にとっては、すでに感覚として捉えていることだが、いかんせん、そうでない方々に「これ」と伝えるのは難しい。
それを「こちら側」と「あちら側」という言葉で表現する。わかりやすい。
「あちら側」を説明するためにグーグルという会社を出し、「こちら側」としてマイクロソフトを出しての対比がわかりやすいのだ。

著者は私と同い年。だが、私よりもはるか前の中学生時代からコンピュータに接し、インターネットに驚き、その後、シリコンバレーに移り住む。

ニューヨークにテロがあった2001年9/11を人生の折り返し地点と定義した。
「人生の折り返し」を考えた著者は、「次の世代」に向けて、いろいろな事を始める。そして、昨年からは「はてな」の取締役に就いた。
この本を読んでいると、Webの次の世界に「ワクワク感」をおぼえるとともに、私も「がんばるぞ」というような気持ちがわく。

著者のブログはこちら。

読書:本多静六自伝 体験八十五年

「本多静六自伝 体験八十五年」本多静六・著。

(まだ2月だけど)今年一番のお薦め本!
慶応2年生まれの本多氏は、苦学して日本に林学というものを築いた人。
樹木を知り、樹木の大切さを唱えている。日比谷公園を作り、国立公園の制定や、氏の功績はすばらしい。
こういう人達のご苦労によって、今日の日本の基盤が出来上がったのか。深い感謝に気持ちになる。

多くの著書を執筆した本多氏は、この本が最後の筆となる。 この本を書き上げた後、急遽され、生誕140年の今年(2006年)復刊された。

晩年の著として、人生85年を振り返った時に、特筆すべきところは、2度も本気で自殺をしようと考えたことだ。そのくだりは、切ないけれどおかしい。

職業の道楽化
私の体験によれば、人生の最大の幸福は家庭生活の円満と職業の道楽化にある。
すべての人が、おのおのの職業、その仕事、その職責に全身全力を打ち込んでかかり、日々のつとめが愉快でたまらぬ、面白くてしょうがないというところまでくればよろしいのである。いわゆる三昧境である。それが立派な職業の道楽化である。

幸福についての考え方
第一は心身の健康である。
第二は自分の望みが叶うことである。
第三は、自分の働き、自分の努力によることである。
第四は、素直な心の感じ方である。
第五は、比較的、かつ進歩的であることである。
第六の条件は、社会の希望に反しないということである。

今日における成功への近道を申し添えておけば、
1.常に心を快活にもつーーー楽天主義。
2.尊心その業に励むーーー職業の道楽化。
3.功は人に譲り、責は自ら負う。
4.善を称し、悪を問わず。
5.好機はいやしくもこれを逸せぬこと。
6.勤倹貯蓄ーーー四分の一貯金の実行。
7.人事を尽くして天命(時節)を待つ。

読書:千円札は拾うな。

「千円札は拾うな。」安田佳生・著。

「常識とは、十八歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう」アインシュタイン

目を引くタイトル、冒頭にアインシュタインの言葉。
つかみはバッチリで、おもわず私も読んじゃいました(笑)。
落ちている千円札よりも、大切なものがたくさんある、ということでしょうか。ところどころ賛同しがたい部分もあるが、それも含めて自分の考えをキッパリと言い切り、著者の個性が出ている。

ビジネス本を読んでいると、松下幸之助氏の言葉を引用する場を見かける。この本にも引用がある。

値切りは半分に、値上げは3倍に(松下幸之助)

この言葉には松下幸之助のあふれんばかりの思いやりが詰まっていると書いている。気になる方は、本書をご覧下さい。

この本の中には、「自分が選んで気に入った服が、ダサいと言われて……..」というくだりがある。たまたま同じ日に「伊勢丹な人々」を読み、そういえば私は、この10年ほどファッションには疎くなっていることを思った。
若い頃には随分と洋服に時間とお金をかけた。そのエネルギーの低下ととともに、何かが、低下しているかもしれない。それは著者が書いている「変化」なのか?

その点女性は、いくつになっても流行に敏感で、香水も服も髪型も、次々と新しいものに変えていく。最近、こうした女性の持つ「変化する力」が、仕事にも大きく影響していることに気づいた。

読書:伊勢丹な人々

「伊勢丹な人々」川島蓉子・著。

「伊勢丹」のパワーがみなぎる本。
10年前まで伊勢丹が大好きで、週に一度は、なんとなくブラついた時期があった。その後、混みすぎておそれをなし(私が年をとった?)、入り口辺りをチロリと見て立ち去るようになり、今は会社から近いのに、足を運ばないでいる。せいぜい地下で手みやげのお菓子を買う程度か。

この本を読んだら、久しぶりに行ってみたくなった。
時代の先端を行く人達がどのような視点で見つめ、伊勢丹という文化を作り上げているのか、そこにはすごいエネルギーがある。

著者にこの本を書くきっかけを与えたという藤巻幸夫氏は、イトーヨーカ堂に移り、「IYG生活デザイン研究所」を設立し、スーパーに独自ブランドの立ち上げで話題を集めている。
TVで見た藤巻氏は、歩きながら早口で話し、細かいチェックをする。パワーあふれる姿は強烈なインパクトとして残る。そういう個性ある人達を育てる文化が伊勢丹にはあるようだ。参考になる。

今はあらゆる業界で大きな変革の時期だなー。
変革の渦の時代にいることは、ものすごーくワクワクする。

読書:サービスを超える瞬間

「リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間」高野登・著。

「リッツ・カールトン」の「クレド」は有名だが、クレドに書かれている言葉自体よりも、従業員がこれをいかに徹するかに一番、興味がある。
この本に紹介される「こんなサービスを展開しました」部分は、事実には違いないだろうけれど、ちょっと自慢話にも聞こえてしまうが、従業員の質の向上をはかるための工夫は大変、参考になる。

ファースト・カードで互いに称えあう
たとえば、お客様の荷物が予想以上に多く、ベルマンがハウスキーパーのセクションにヘルプを頼んだとしましょう。荷物を運び終わったとき、手伝ってもらった感謝のしるしとして相手に手渡すのがファーストクラス・カードです。

最初から優秀な人材を採用しているから、さらに良くなるのだろうか?
採用の際のポイントは次のように書いてある。

リッツカールトンでは採用の段階で応募者の人間としての資質を重視しています。品格、協調性、集中力などですが、向上心もまた、とても大事な要素となります。

読書:すごい考え方

「すごい考え方」ハワード・ゴールドマン・著、松林博文・翻訳。

以前、読んだ「すごい会議」と同じ著者、装丁も似てる、ので読んだ。
全体には、周知のことが多く、事例が少ない点が残念である。同じ著者であっても、訳者が違うとこうなるのかと、その違いを比較するのもおもしろいかも。

夕食会で私は「会社が成功するための条件にはどんなものがあると思いますか?」とハワード氏に尋ねてみた。すると彼はしばらく考えて「そうだね、雰囲気(ムード)がいいということかな」と答えた。

これは嬉しい。私が経営する上で大切だと思っていることは「よい雰囲気作り」だ。けど、IT企業で働く若き社員らに「よい雰囲気をつくりましょう~」と実にやさしい言葉で語りかけても、もっと小難しい言葉や横文字を並べた、いかにも頭良さそうな言葉でないと、あまり納得したくない者もいる(と思う)ので、最近は、言葉には出さずに、影ながら努力をしているわけだが、ハワード氏のような方が言ったとあらば、私も声高に言ってもいいだろう。

ま、そういうわけで、いろいろ声をかけるのであって、どうぞ、嫌がらずに相手してくださいね、スタッフの皆さん。

読書:リーダーのためのとっておきのスキル

「リーダーのためのとっておきのスキル」石田淳・著、小阪裕司・監修。

著者は「株式会社ウィル PM インターナショナル」と「株式会社ウィルエドゥケイトスクール」の代表。アメリカの「ADI社」の日本代表も務める。

「IS行動科学マネジメント」とは、ADI社が開発したマネジメント手法をベースに試行錯誤を重ねてアレンジをしたものに、そのように命名したようだ(ISが何の略かはわからないが)。

「IS行動科学マネジメント」は、データを中心とする人間行動の法則です。

「IS行動科学マネジメント」の人材育成には、大きく分けて5つのステップがあります。
 1.行動を分析し、「行動のレパートリー」を考える
 2.行動の核を見つける
 3.チェックリストを作る
 4.行動することを「快」につなげる
 5.理念をインストールする

「行動科学」という言葉は、「犬のしつけ」の本で、よく目にした(笑)

会社経営にこそ「行動を科学する」ことが必要だと思い、私なりに取り入れてはいる。がしかし、、、部下を指導(というか伝授)する際に、なかなか思うように伝えられないことが多い。著者が書いているように「行動を書き出し、分析すること」を取り入れてみようと思う。(著者も書いてるが)中小企業では、マネジメントにお金をかけられない。お金をかけずに成果を上げる方法を私も模索中だ。

読書:ハンバーガーを待つ3分間の値段

「ハンバーガーを待つ3分間の値段 ― ゲームクリエーターの発想術」斎藤由多加・著。

「マッキントッシュ伝説」「林檎の木の下で」などを書いた斎藤由多加さんの本(どちらも読んだ)。ゲームクリエーターが本業とは知らなかった。Mac系のライターさんだと思っていた。すみません。

ほぼ日刊イトイ新聞「もっとけドロボー! 斉藤由多加の頭のなか。」などに執筆しているものをまとめたもの。

デジカメで撮影した、おもわず笑っちゃうような写真と、著者の発想豊かな視点がおもしろい。
「待ち時間」が「長い」と感じる場合と、そうでない場合を分析した視点は実に楽しい。

私は待つ時間が大嫌い。それで、待ち時間にそなえて本を持ち歩く。電車を待つ時、人を待つ時、たいがい、読んでる。もっと時間があいちゃった時はMacを開く。本を読み終えてはいけないので2冊は持って歩く。Macと本とiPodと携帯電話。ドンドン重装備になる。

この本は1,000円とお手頃価格で、薄くて、それでいて内容が楽しくてハッピーな本だ。

読書:ついこの店で買ってしまう理由(わけ)

「ついこの店で買ってしまう理由(わけ)」 博報堂パコ・アンダーヒル研究会・著、小野寺健司、今野 雄策・編集。

お店を開いている方にはお薦め。おもしろい。
お店を開いてみたくなるような本。
イラストを多様していて読みやすく、わかりやすい文章。それでいて内容は的を射ている。

パコ氏は、ニューヨークにENVIROSELLという会社を経営している。東京にはエンバイロセルジャパン社を設立。

この人の「調査の徹底」とそれに基づいた科学的な分析がすばらしい。
調査は、トラッキング(行動観察)という手法で、お店に入った時から、その人が何を手にとり、それを買う、買わないという行為をつぶさに観察する。それを気づかれないように観察するのがポイント。そういう地味~な調査を繰り返し行い、膨大なデータから分析をする。これを全社員が毎週末に行う。パコ氏は20年間、行ってきた。

そんなパコ氏が日本の独自性としているのは、

1つ目は、「実務的」でありながら同時にそこに「美意識」があるという、この2つが融合可能であると示したことである。

2つ目は「ドラマ」ー梨園の世界とか、いうなれば文楽とか能のような世界、要素を世界に提供してくれたと思う。

3つ目に、日本が世界に対してもたらしてくれた大きな要素は、「少ない」こと「シンプル」なことが、実はたいへん大きいこと、深いことを意味するということである。

例えば、研ぎ澄まされた「禅」の世界であるとか、一輪の花の中に見いだされる美意識、「俳句」という制限された言語数の中で凝縮したコミュニケーションをはかっていくという、研ぎ澄まされた中にあるおける、深さ、広さ、大きさというものを日本は伝えてくれる国である。

へぇ~~~、なるほどね~~~。