読書:カラフル

「カラフル」森絵都・著。
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また森絵都さんの作品を読む。

この本は、亡くなった「魂」から始まる。
なぜか抽選であたった魂が、別の人間になって、輪廻転生へのリベンジを行うという、なんともまぁ、おもしろい設定で始まる。

別の人間である小林真君はさえない中学生で、自殺してしまったところに、その魂が入り込み、死んだ直後の小林君が蘇るというわけだ。

自殺にはいろいろな理由があって、けれど今にして思えば大いなる勘違いもあり、それに魂は気づいていく。

人は、知らぬ間に人を傷つけたり、喜ばせたりする。お互いに。
人は傷つきやすく、そして勘違いする。

悲しみの中にユーモアがあって、グイグイと引き込まれてあっという間に読み終えた。あと味も明るくて、爽やかな感じ。

読書:風に舞いあがるビニールシート

「風に舞いあがるビニールシート」森絵都・著。
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ラン」を読んで、すっかり魅了された「森絵都」という作家。
直木賞受賞作品を読んでみることにした。

この本には、6つの短編小説で構成されている。
以下タイトルと、後で思い出せるように一言を添えてみた。

・器を探して(菓子の器を求めて)
・犬の散歩(捨て犬をボランティアで預かって…)
・守護神(文学部にニシナミユキという守護神が…)
・鐘の音(仏像を修復するする仕事をしていて…)
・ジェネレーションX(クレーマーに謝りに行く道中)
・風に舞いあがるビニールシート(元夫がアフガンで亡くなり…)

どれをとっても、すごい。すごいのだ。ホントにすごい。
久しぶりに夢中になりたい作家に出会った感じ。
(久しぶりというのは、それまでそういう作家が出てないという意味ではなく、単に私が小説を読んでないという意味です。誤解のないように。)

6つは、まったく異なる小説。
だが、根底には、平凡ながらも、それぞれの事情がありながらも、精一杯生きている様が表現されていて、胸にジンと来る。

たまたま、マラソン関係の本を読みたくて「ラン」に出会って、それで、この本に出会えた。世の中の不景気、政治不信、、、諸々すべてを、この本を読むと忘れてしまう。物語に、ドップリと引き込んでくれる。小説の力ってすごいなぁ。

読書:冬の喝采

「冬の喝采」黒木亮・著。
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このごろ陸上に関する小説ばかり読んでいる。おもしろい。
この本は小説というよりは自伝的。
著者はかくべくして書いたというか、これを書きたかったのではないか? という「想い」が、本のあちらこちらから滲み出ている(気がする)。

主人公は、北海道の中学生の時から陸上を始め、高校1年ではそれなりの記録を出すものの、怪我に泣く。高校2年、3年は走れない。少し良くなったと思って走り出すと悪化するということの繰り返し。

いつも走れずに筋トレばかりを繰り返す。

大学は早稲田大学に普通に受験して入る。
陸上の思いは断ち切れない。東京の病院でギブスをかけて治すという方法を取り入れてから、少しずつ走れるようになる。

そうして陸上のサークルで1年を過ごす。すると「もっと走りたい」という欲求が出る。さんざん迷った挙げ句に、早稲田の競走部の門をたたく。

監督は、あの中村清さん。
1年浪人して早稲田に入った瀬古選手は同じ学年。
ただ、主人公の金山は1年遅れて競走部に入ったから、次の1年生と同じ扱いになる。それが入部の際の条件であった。

大学時代も怪我に苦しみ、「いつ悪くなるかもしれぬ」という恐怖とともに過ごす。それと、体重を増やしてはいけないので食事制限をする。「腹一杯食べたい」といつも思っている。

そんな陸上生活のかたわら(スポーツ推薦というわけではないので)他の学生と同様に授業に出て試験を受け、それ以外に「毎日英語を30分聞く」と自分に課して、実行する。ストイック。悲しくなるほどストイック。

中村監督は、陸上に対する情熱は人一倍あるものの理不尽だ。その理不尽さに「退部」も考えるが、瀬古さんにも思いとどまるような話をされ、結局、退部しなかった。

そのおかげと、本人の努力のおかげで箱根を走る。
冒頭の文章は、瀬古からタスキを受け取って走るという、曲で言えば、いきなりサビから入るような出だし。

分厚い本だが、グィと引きつけられて読んだ。

本当に陸上を辞めるのか?と聞かれた時に、
「僕は、、、瀬古にはなれませんから」と答える。

その1行は、身近に瀬古選手を見ながら辛い練習をこなした者でないとわからない、説得力のある言葉だ。

この本に出てくる「絵画館コース」と「迎賓館コース」というランニングコースは、私が時々走るコース。ここを瀬古さんが走っていたらしいという話はよく聞く。早稲田の競走部は、中村監督の家が千駄ヶ谷にあるということで、ここをよく走ったらしい。私はせいぜい3周走る程度だが、これをなんと10周、いやそれ以上も走る。しかも毎日。これはやってみた者にしかわからないハードな練習量。

著者は、1957年生まれ。
きっと、彼が4年の時に私が短大の1年生に入学したと思う。

私は、「なんとなくクリスタル」な女子大生としてチヤホヤされて大学生活をエンジョイしてしまった。わずか数年前の先輩は(たぶん同世代も、ちょっと下級生も)、安アパートに共同トイレ、風呂は銭湯という生活が当たり前であった。

そのようにして東京で勉強させてくれた事に、親に感謝し、そしてスポーツも勉学にも励む。そこにはチャラチャラした遊びはまるでない。たまに競走部の人達とハメをはずして飲む。おもいっきり飲む。

中学生の時に亡くなった伊東君への想い、両親への想い、いろいろな事がギューっと詰まった1冊。マラソンする方はきっと引き込まれます。お薦めの1冊。

ところで、マラソンに限らずスポーツをされる方は怪我に苦しむ。
私の弟は「おやま治療院(現在はおやま調整院)」を経営しています。本当に困ってる方は一度いらしてみて下さい。彼の治療は、悪い箇所を触るだけで痛みなし、マッサージをするのでもなし。ちょっと変わった治療です。私がこれまで怪我をしないでやってこれたのは、時々診てもらっているからなんです。

読書:自ら育つ力

「自ら育つ力」渡辺康幸・著。
サブタイトル:早稲田駅伝チーム復活への道
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我が家も、正月はニューイヤー駅伝から始まり、大学駅伝の往路・復路を見ながら餅を食い、あー、年が明けたなぁと実感します。

今年(2009年)の箱根駅伝の優勝は東洋大学。
往路・復路の完全優勝を果たした。

東洋大学は、12月に陸上部員が逮捕された責任をとって、川嶋監督が辞任するというハプニングが生じ、箱根の出場も危ぶまれた。優勝の影には、部員の様々な思いがあったことでしょう。

著者・渡辺氏が監督を務める早稲田大学は往路・復路とも2位。
早稲田は優勝候補だったが、東洋の往路5区を走った1年生選手・柏原氏が9位でタスキを受けとり、一気にトップに躍り出て、そのままゴールしたことはあっぱれ! 伝説になりましょう。

早稲田は、前評判通りの走りをしたと思います。
ただ、東洋は神がかり的に強かった。

そんな実力十分の早稲田だが、渡辺監督が就任した当時は、シード校にも入ることが出来ない辛い時代であった。

「早稲田の監督をやるなら、あと2、3年待ったほうがいい」いつもは冗談まじりに明るく話す瀬古さんが、受話器のむこうで真剣な表情でいるのがわかった。

誰から見ても「貧乏くじをひくようなものだ」という時に、なぜ監督を引き受けたのか?

「僕たちを見捨てないでください」

そうはっきり言われたのではないが、「そうみえた」というのだ。当時、早稲田のコーチをしていた渡辺氏が監督をことわったら、早稲田からも去らざるを得ないかもしれない。見捨てないでとみえた、そうであったのだろうと思う。

さて監督就任後、最初から順調だったわけではなく、むしろ最初は失敗の連続。大学生当時の自分の練習メニューを選手にさせたところ、故障者が続出してしまったり。

もっと選手たちのことを知らなければいけない。もっとコミュニケーションをとらなければいけない。

そして、学生と同じ寮での生活が始まる。

今、どの章を開いてみても、心にしみる言葉が並ぶ。

そんな時に監督を引き受けて、それからどのように選手を育ててきたのか。
陸上に興味がなくても、例えば、企業人が部下や後輩を育てるとか、教師が生徒を育てるとか、部活の先輩が後輩を育てるとか、さまざまな場面で参考になる言葉が多い。

読書:カゼヲキル(3)疾走

「カゼヲキル(3)疾走」増田明美・著。
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第3巻では、増田明美本人と思われる「牧田さん」が登場して、主人公にインタビューをする。その記載の箇所は(自分を褒めているところなど)微笑ましい。

第1巻で中学生だった主人公が社会人となってオリンピックを目指す。
そこまでに実に10年の歳月をかける。

実際には、もっともっと長い年月をかけるでしょう。
その間に、嫌になってしまうことも多々ありましょう。

それをどのように乗り越えて、練習に打ち込み、怪我から立ち直り、前向きに生きていけるか。
どんな世界でも、このように打ち込む姿に我々は感動を覚えます。

第1巻に比べると、時間の刻み方が早い気がしました。
実業団に入ってからの、もっと様々な話を、もっとゆっくりと小説にして欲しいと思いました。オリンピック選手が小説を書くということ事態が珍しいこと。増田さんには、この世界もまた鮮やかに切り開いて欲しいと思いました。

読書:iPhoneサイト制作ハンドブック

「iPhoneサイト制作ハンドブック」向井領治・著。
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風邪をひいてしまったようで、喉が痛みます。
週末にはマラソン大会があるので、(たいしたことはないのですが)念のためクリニックに行って薬を処方して頂きました。会社でも風邪は流行っていますが、クリニックでは多くの人が順番待ちを。皆さんがゲホゲホと咳をしているので、ここにいたら余計にひどくなりそうー…。頂いた薬を飲んだら、今度はねむーい…。

それはそうと、iPhoneをいまだに使いこなしていないオヤマです。言い訳ですが、Mac依存度が高くて、他の媒体を使いこなせない…。しかーし、正月休みに気仙沼にiPhoneを持参したことを機に、ぐっと身近なものになりました。このごろは、毎日、なんやかんやと使っています。

このブログのiPhone用の表示は人様のテンプレートを利用していますが、それではいかんと思いまして、こちらの本を入手。もう少し詳しくなりたいオヤマです。

読書:カゼヲキル(2)激走

「カゼヲキル(2)激走」増田明美・著。
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「カゼヲキル」の第2巻を読んだ。
この話の設定は、第1巻では中学生の主人公/美岬が、軟式庭球部では補欠だったが、町の駅伝大会で高校生4人を抜きさったことからから陸上部の監督にスカウトされ、わずか数ヶ月で大会に出るところから始まる。

舞台の設定は、増田明美本人のものだろうと思う。

陸上界の右も左もわからない彼女が、その素質を生かして、そして家族に支えられて成長していく様が書かれている。

この第2巻では、陸上の名門高校に入った美岬が大会で活躍しつつ、因縁のライバルが先輩にいるという設定で、その葛藤などを描く。

スポーツする者は、年齢や経験は関係なく、自分のモチベーションの維持をどのようにするか(出来るか)は大切。特に我々の年齢になると、誰からか「ヤレ」と言われるわけでもなく、やるもやらぬも、すべてが自由であり、自己責任。

時には折れそうな心に、こういう本もいいと思う。

読書:カゼヲキル(1)助走

「カゼヲキル(1)助走」増田明美・著。
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ラン関係の小説がおもしろくて読んでいる。
これは増田明美さんが書いた本。

Amazonのカスタマーレビューにも書かれているが(それを参考にこの本を読んでみることにした)オリンピック選手ならではの心の動きが丁寧に書かれていて共感を持てる。

増田選手は、高校生の頃から日本記録を次々に塗り替えた。当時のマラソン会のスターでした。そういう人でなければわからない事は数多くある。

そして、最近の解説者としての活躍はすばらしい。
丁寧に取材をされていて奥が深く、そして耳にやさしい声と、絶妙なタイミング。彼女の解説を聞くのは楽しい。

けれど小説はどうなの?などと、うがった見方をしていた。
「あとがき」を読むと、

競技を引退し、今、高橋尚子さんやアテネ五輪金メダリストの野口みずきさんを取材していると、「そうかこんな人だから世界一になれたんだ」と感じます。とくに子供時代や学生時代のさまざまなエピソードが微笑ましい。競技レベルとともに人格が磨かれていく様子が興味深いのです。

この文書を見ますと、謙虚ですよね。
ご自分のオリンピックでの失敗、そして取材していくうえで自分にないものを探し出し、そしてそれを小説という形で発表をしていこうとする姿勢、そういうところを応援したいと思います。

文書については、そういってはアレですが、まだ初心者の域を抜けてないと思いますが、いやでも想像よりもはるかに良いと思いました。この分野をもっと切り開いて欲しいなと思います。

続けて、第2部を読むことにしました。

読書:ラン

「ラン」森絵都・著。
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年末に「一瞬の風になれ」を読んで楽しかった。
小説っていいな。
特に「走る」題材がいいなーと思っていたら、書店にこの本があったので読んでみた。
おもしろい!

走る理由は人それぞれ。
健康とダイエットが一番だが、この本の主人公は実に奇想天涯な理由で走ることになった。仲間達の理由もまたおもしろい。

ひょんなことからフルマラソンを走ることになってしまった主人公と仲間達は決して順調ということはなく、むしろ様々な困難に向き合うことで成長していく。

おかしくて、それでいてホロリとさせる。

いろいろな場面で心に残る言葉あるが、雑誌の取材に答える真知栄子のシーンがおもしろい。

「明日はどうかいいレースをして、全国の主婦ランナーたちに感動を与えてください」
熱く語り上げた渡瀬さんに、真知栄子は涼しく言い返した。
「いやよ」
「え」
「私の感動は私だけのものよ。だれにも寄生させやしない」

という文章が、あまりに自己中心的で、心に響いた。人間は常に自己中心的なものを持っている。大人になると、それを外に出さないだけだ。

42.195kmを走り切るというのは、きれいごとなんかじゃなくて、本当に辛い。それを走り切るのは、「誰かに感動を与えるため」なんかじゃない。

私たちは、必死で走る。走り続ける。

この作家の、他の本も読んでみたくなった。

読書:一瞬の風になれ 第三部

「一瞬の風になれ 第三部」佐藤多佳子・著。

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掃除とか、掃除とか、掃除とか、、、色々やらなければならない事が多いというのに、読書。この本おもしろくて、一気に読んだ。

ストーリー自体は、そういってはアレですけど、たいした話ではないのです。どこにでもあるような高校の部活の話。けれど、何でしょうか、グイグイと引き込まれてしまう。

ストーリー展開、心の動きのテンポが、私に合っていたのでしょうね。

「カッコいい」を「カッケー」という言葉を用いるなど、最近の若者の特徴があっておもしろいが、これはあと10年後には、どのように受け取られるのでしょうか? これからの文学はどうなるのでしょうか? なんて面倒な話は置いといて、正月休みの、ちょっとゆるんだ頭にはちょうど良い娯楽となりました。

私も中学、高校と部活一筋だったので、心の葛藤、努力の結果、わかります、わかります。

著者の佐藤さんは「未経験の私」と「謝辞」で書いている。
作家は、自分で体験してないことを、このように描けてしまうという、すごい才能です。

現実の県立高校生の部活の葛藤は、ここにはないけれど、あと一つ、「勉強」がついてまわりましたっけ。部活で疲れた身体、でも、明日の英語の単語を調べないといけない。和訳を、数学の公式を、いろいろやらなければいけない。結果、、、何もしないで寝てしまう、、、「あー、寝ちゃった」その葛藤がいつも付いてまわった高校生活でした。

そんな、あの頃を思い出してみたりして。

でも、俺たちの4継チームは、いきなりポンと生まれてきたわけじゃない。(中略)毎年、毎年、ウチの部で、誰かが4継を走り、バトンを渡してきた。この総体路線で、ずっと走り続けてきた。(中略)
俺は足を速めて、先生に並んだ。
「ずっと、つながっているんだね」

部活をやっていたものとしてはジーンと来ます。名もない県立高校の、どうということのない部活であっても、ずっとつながっているんですね。

正月の駅伝もまた楽しみであります。