読書:行きずりの街

「行きずりの街」志水辰夫・著。
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帯には「ミステリー史に燦然と輝く大傑作! 1991年度このミステリーがすごい! 第1位」とあって読んだ。

ミステリーを読むのは久しぶり。
志水辰夫さんの本ははじめて。

恥ずかしながら、宝島社のはじめたミステリー小説のランキング「このミステリーがすごい!」を知らなかった。1988年度から始まって、蒼々たる名前が並ぶ。

私は通勤途中や外勤の電車待ちなどに本を読むが、他の事をいっさい忘れて内容に没頭する。至福の時間。

内容には、行方不明になった塾の教え子を探しに東京にやってくる主人公が、事件に巻き込まれていく。港区の私立女子校を舞台にして、東京の華やかな部分と暗闇とが交互に出てくる。やたらおおげさだと思う箇所もあるが、そういうこともドラマ仕立てとしての要素として楽しい。

読書:「狂い」のすすめ

「「狂い」のすすめ」ひろさちや・著。
「狂い」のすすめ

少し不思議な内容だった。
冒頭がいきなり、「ただ狂え」だからね。

「目的意識を持つな!」とか「希望を持つな!」とか。これまで読んできた本と逆の事をとなえる。そんなもの(希望とか)は、最初からないんだ的な考え。

逆に言うと「今のままでいいじゃないか」とか、「あくせくしていて何になる?」とか、そういう事かと思う。たぶん、今のようなストレス社会では、もう少し、力を抜いてみてもいいのかもしれない。

けれど、私のように、たいした力が入ってないものは、もうちょっと力を入れてみたいと思うわけで。今の私には同調出来ぬ部分もある。しかし不思議なことに、ひどく納得する箇所もあって、1人の著者に対して、これほど賛否両論に思うのは、不思議な感覚。

読書:強いニッポン

「強いニッポン」御手洗冨士夫、街隆雄・著。
強いニッポン

御手洗さんは、ご存知キャノンの会長。現存する経営者の中で私が最も尊敬する人。御手洗さんの言葉をそのまま引用する。

会社には存在意義が四つある。順番は別として、一つは従業員の生活の安定、向上で、二つ目に投資家に対する利益還元、三つ目が社会貢献で、もう一つは会社が生きていくための自己資金を稼ぐことだ。

ところで、企業にとって最も大切なものは「変身力」である。

松下電器の中村さんとの対談がある。この時代を代表する経営者。2人とも会社の危機の時に社長に就任し、見事に回復した実績を持つ。そういう経歴なのに、2人とも謙虚。

御手洗さんは、「少子化問題」、「地方の格差問題」に触れ、東芝の西室さんとの対談では、中国経済の動向に触れる。

少子化になり、老人が増えた後を考えて、工場内では自動化(ロボット化)をどのように進められるか、そういう技術を付けることで、日本は「強いニッポン」になれる。今の私には、「美しい国」と言われるよりも、はるかに心に響く。

読書:ひとは情熱がなければ生きていけない

「ひとは情熱がなければ生きていけない(勇気凜凜ルリの色)」浅田次郎・著。
ひとは情熱がなければ生きていけない

浅田次郎の「勇気凜凜ルリの色」シリーズはすべて読んでいる。今もすぐに手の届くところに置いて、たまに眺める。

この本のサブタイトルに「勇気凜凜ルリの色」とあるから、読まずにはいられない。久しぶりのエッセイ。エッセイとしてまとめたというよりは、講演で話したことや、何かに掲載したものをまとめたもの。内容的には「たしか前も読んだ」こともあるが、時を経て書く文章は、さらに磨きがかかっている。

この本の「ひとは育ちから何を学ぶか」の章に、

私の生家を例に挙げれば、戦前から続く「東京都中野区上町」には町内会が存在したが、「東京都中野区中央4丁目」という標示に変わったとたんから、(つづく…)

浅田次郎の出身が私が住む新中野とは驚いた。小太郎の散歩道に「上町町会」の掲示板があったはず。会社帰りに寄り道してみた。

オーオー、これこれ。
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前から「上町」って何だろう?と気になっていた。この一帯のあちらこちらに「上町」の標示が残る。小さな神社があって、その倉庫にも「上町」の標示あり。
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この神社には、主のような猫がいて、小太郎は子犬の頃にこの敷地内で、その猫に追いかけられたのが後遺症に残り、今も猫が恐い。

「浅田様、今も「上町町会」は存続しているようですよ」と、会えるなら伝えたい。

本によると、この辺りはすっかり様変わりしたようだけれど、古い家が数軒ある。その家の様子から想像すると、この界隈は緑が美しい良い街だったろうと思う。じいさん・ばあさんが多く住んでいるから、浅田次郎の少年時代のこの街のことを、覚えている人も多いだろう。誰かれかまわず、その頃の事を聞いてみたいという衝動を押さえつつ。

浅田次郎がこの辺で遊んだのかと思うと非常に嬉しい。これがファン心理ってヤツですか。

幼少の頃に通ったという銭湯は、この「沢の湯」ではないかしらん?
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読書:号泣する準備はできていた

「号泣する準備はできていた」江國香織・著作。
号泣する準備はできていた

先日読んだ「銀座24物語」に掲載されていた作家の一人、江國香織さんの著書。第130回直木賞受賞作品。

amazon の「カスタマーレビュー」では厳しい評価もあるが、私には非常に良かった。
さりげない日常が、この人の文章で鮮やかに活きる。
彩りというのか、食感というのか、肌触りというのか、そういうものが伝わる文章。

詩人はすごい。その研ぎすまされた感性。この人の作品をもう少し読んでみたい。

そういえば最近、ネットで本を買う頻度が極端に減った。
一時期は、本の購入のほとんどがネットだったが、おおげさに包装されて届くのが面倒になった。開くにも手間がかかるしゴミも出る。それが急に面倒くさく感じて。

本は実際に手に持ってみて、ページをめくって、目に飛び込んでくる文字の勢いというのか、そういうのがいい。だから、少し時間があると書店に行く。それが楽しみ。
ここ最近は、書店60%、古本屋30%、ネット10%という割合。じっくり選んだ本は「つんどく」をせずに読み切るようだ。

この本もとある書店で、私に飛び込んできた本。

読書:銀座24の物語

天気予報では、本日の東京は27度まで上がるとな。
夏物のスーツで出た。ホントの夏が来たら、何を着ればいいのでしょ?

「銀座24の物語」銀座百点・編集。
銀座24の物語

「銀座百点」というタウン誌に掲載された短編小説をまとめたもの。豪華顔ぶれ。読みごたえたっぷり。

24の短編の著者は次の通り。

椎名誠、皆川博子、久世光彦、山田太一、赤川次郎、藤堂志津子、志水辰夫、安西水丸、常磐新平、森村誠一、群ようこ、高橋治、連城三紀彦、藤沢周、嵐山光三郎、橋本治、平岩弓枝、小池真理子、大岡玲、藤田宣永、江國香織、佐野洋、鷺沢萌、村松友視。

ね、豪華でしょ。
銀座を舞台にした力作がギュっと詰まっていて、すごーく得した気分。

銀座はいろいろな顔を持つ。

私の父の「東京に出張」は「築地市場」がメインで、夜は銀座に繰り出すのが嬉しいわけ。そういうことだから、父との大事な思い出はいつも銀座。

私も好きな街。といっても、私が繰り出すのは「歌舞伎座」と「アップルストア」なのねー。

「解説」の松たか子の文章「銀座へのラブレター」も味わいがある。歌舞伎ファンには特に。

読書:挫折し続ける初心者のための最後のジャズ入門

「挫折し続ける初心者のための最後のジャズ入門」中山康樹・著。
挫折し続ける初心者のための最後のジャズ入門

「まえがき」の冒頭

どうやら世間では「ジャズはむずかしい」と思われているらしい。
そのとおりだから返す言葉もない。

この文章で始まる。読まずにはいられない(笑)
著者は、元スィングジャーナル編集長。

初心者がジャズを難しい、怖いと思うことに対して、「そう、その通りだ」と開き直り、それでもジャズ道入門(ジャズ入門ではなく「ジャズ道」としているところに注意)したいならば、カクカクシカジカ、、、と中山氏の独特の調子で指南が続く。読んでいて楽しくなる。

私は、たまたま池袋のマイルス・カフェの影響でマイルス・ディビスのCDを買って、昨日はそれを朝から聴いていた。中山氏の指南に従って「ひと月にCDは2枚」を買って聴いてみようかと思う。

なぜ「月に2枚」かというと、「集める」のではなく「聴く」ことに徹すると、せいぜい、ひと月に2枚がいっぱいだろうということだ。

私は、ジャズを聴くことを難しいとか、怖いとか思ってない。昔はそう思ったかもしれぬが忘れた。いずれにしても、たいして聴いてもいない。それなのに、生意気にも次に「弾きたい」のだ。

ジャズのスタンダード曲も知らず、スケールもテンションコードも知らぬ。どこから始めりゃいいのだー。まずは聴こう。マイルスを。

読書:ITとカースト

東京はよく晴れて気持ちが良い。
気温は高く(23度)、初夏のような日差しに、時折、吹く風は春らしいさわやかさ。ゴールデンウィークはいかがお過ごしですか?

朝、中野区を少し走った。
中野区って、結構、ゴチャゴチャしているのが、休日の朝は人が少なくて走りやすい。これからの季節は早朝ランですな(って、起きれるのか、オイ)。

「ITとカースト」伊藤洋一・著。
サブタイトル:インド・成長の秘密と苦悩
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インドITはすごいと聞くが、その原動力はどこから来たのか?実体はどうなのか?興味深い。

この本は、その辺のことを実にわかりやすく書いてある。インドの人口は11億人と言われているが、ちゃんと登録出来てない人が、あと1〜2億人いるのではないか、という話もあるらしい。そのうちの40%が文字が読めないとしたら、かなりの人数の文字を認識できない人達がいる。日本とは大違いだ。

今も非常に貧しい農民達が大勢いるというのだ。
大学入学の時に、そういった貧しい人達に優遇措置があるらしい。別枠で入学が可能で、そのほんのわずかな優遇措置枠に、ものすごい倍率の人達が競って入ろうと勉強する。

しかしながら、その狭き門を通ったとしても、もともとのエリートとの差はあまりにも大きく、挫折する人も多い。その中で、ほんの一握りのものすごーく優秀な人達が残る。その人達が世界に出ていって、ITを支えているわけだ。貧しい農村で一生を終えるか、ITを習得していい暮らしをするか、究極の選択に大勢の人が挑んでいるわけだ。

それから英語が使えるという利点。

日本では教育上、排除して来た「競争」だが、インドではその「競争」によって伸びている。あと10年経ったら、いったいどのようになっているのか…..。

読書:考えないヒント

ゆったり流れる休日の時間。
この休みのテーマは「掃除」だが、ちっとも掃除をする気になれない。予定のない休みは久しぶり。部屋は荒れている。

このところ、3〜4年ごとに引っ越しをしていた。
「引っ越し」すれば自動的に部屋が片付く。
しかし、小太郎を飼ってしまったので、そう簡単には引っ越せない。
思いがけず、長く住んでいる。部屋は荒れている。あーあ、片付けないと。


「考えないヒント」小山薫堂・著。
考えないヒント

サブタイトルは「アイデアはこうして生まれる」
小山薫堂さんの著作。人気番組にはこの人の名前がある。

「勝手にテコ入れ」トレーニング
アイデア体質をつくるために効果的なトレーニングの一つが、僕が「勝手にテコ入れ」と名付けている習慣です。
(中略)
たとえばレストランに行ってメニューを見たとき。自分だったらこんなメニューは出さないのにとか、こんな書き方はしないのにとか考える。そして、その店にぴったりの、いいメニューを考えて、お客さんへの紹介の仕方や、雑誌への売り込みの仕方まで考える。
まぁ、大きなお世話なんですが。

同じように考えることあるよね。
小山さんは、これが徹底しているんですね。かなり具体的に詰めていて、そのまま企画書になるようなところまで考えちゃう。仕事でもないのに、楽しんでいる。

そして、そういう事が「偶然」を呼び、仕事になったりして、それをまた楽しんでいる。
いいアイデアは、「楽しさ」から生まれるのかな。

読書:地下鉄(メトロ)に乗って

今年から4/29は「昭和の日」だそうです。

久しぶりに何も予定がない休日。近所の書店と古本屋をブラブラする。どれを買おうかと迷いながら、本を選ぶ時が一番幸せかもしれない。

「地下鉄(メトロ)に乗って」浅田次郎・著。
地下鉄(メトロ)に乗って

浅田次郎は、大好きな作家です。

「地下鉄(メトロ)に乗って」は映画化され、映画を観る前に読んでおかなければ!と思っていた本。一気に読んだ。

これぞ「浅田文学!」であります。
父を思う息子の気持ち、息子を思う父の気持ち、不器用な親子は、歯がゆいほどにうまくいかない。現代からタイムスリップした世界とを行き来することで表現する巧みな、そして知れば知るほど悲しい世界。

これを「昭和の日」に読むというのは何かの必然か。

ちなみに最初に登場する場所は、私が住んでいる「新中野」。
映画も楽しみであります。DVDで借ります。すんません。