読書:国家の品格

「国家の品格」藤原正彦・著。
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藤原先生、よくぞ書いてくださいましたと拍手する。勇気百倍もらった本。そういう40歳以上に受けたに違いない。この本は売れている。

「例えば「人を殺してはいけません」ということだって、論理では説明出来ません。(中略)人を殺していけないのは「駄目だから駄目」ということに尽きます。」

以前、私は次のように書いたことがある。
「人を殺してなぜ悪い?」の質問にあっけにとられ、咄嗟には返す言葉を失う。
「そんなごど、決まってるっちゃね〜」と論理的な説明にならずに四苦八苦する。

藤原氏はそれでいいんだ、と書いている「駄目だから駄目」

藤原氏は、「喧嘩について」父が教えた次のことをよく覚えている。

5つの禁じ手がある。
一つ、大きい者が小さい者をぶん殴っちゃいかん
二つ、大勢で一人をやっつけちゃいかん
三つ、男が女をぶん殴っちゃいかん
四つ、武器を手にしてはいかん
五つ、相手が泣いたり、謝ったりしたら、すぐにやめなくてはいかん
(中略)
しかも父の教えが非常に良かったと思うのは「それには何の理由もない」と認めていたことです。「それは卑怯だから」でおしまいです。

各家庭に同様の教えがあったのではないかと思う。そう言われて育った世代は「いじめ」こそはあったけれど、「今のような陰湿ないじめ」はなかった。

藤原氏の家は武士なので、「武士道」を重んじる。オヤマ家は商人の家で、商人の家にもいろいろな教えは伝わっている。なにかは決定的に違うだろうが、根っこのところは同じように思えてならない。藤原氏も書いているが、江戸時代には、歌舞伎などによって武家の教えが町人にも伝わったとあるので、それはそうだろうとは思う。

「天才の出る風土」という章がある。美しい風土に天才が生まれるという藤原氏の持論。それを思いながら、景色の美しい気仙沼から、人が多くて雑然とビルが立ち並ぶ東京に戻る。天才は東京よりも気仙沼の方が出やすい気はする。この本の通りならばね(笑)