読書:ひらがなで考える商い(上・下)

「ひらがなで考える商い(上・下)」伊藤雅俊・著。

著者はイトーヨーカ堂の創業者。前身の羊華堂(ヨーカ堂)は兄が創業した。伊藤さんは戦前は少しだけサラリーマンの経験をするが、戦後は北千住に移った「羊華堂」で母と兄と下で働く。2坪の洋品店。母から商売を一から叩き込まれる。

お客様は来てくださらないもの
お取引先は売ってくださらないもの
銀行は貸してくださらないもの

一番大切なのは信用であり、信用の担保は、お金や物ではなく、人間としての誠実さ、真面目さ、そして何より真摯である。

商人は自由人であり、商人には高い志が必要である。

イトーヨーカ堂は大企業へと成長したが、その過程で、経営目標をかかげたことがない、というのだ。これは意外。一つ一つの積み重ねで、たまたまこうなったというのだ。

松下幸之助さんに「人材」について伺った時のこと、松下さんがおっしゃった言葉で強く印象に残っているのは
「伊藤さん、町工場に東大出の人が来たら、それは人材でっか」町工場で欲しい人と、大会社で求める人とは、必ずしも同じではない。
松下さんは「あんまりインテリが集まりすぎている会社は、発展しない」とも言われた。思慮分別のかたまりになると、冒険するエネルギーがなくなり、頭を垂れる商売人の精神が乏しくなるということなのだろうと思います。

「大企業病」という言葉があるが、まさにインテリが多くなりすぎた弊害なのかもしれない。

「おかげさまで」という心。
母は毎日のように言っていました。
「ご近所あっての羊華堂だから、周りにほこりを立てないように打ち水をしなさい。そして何よりもお客様を第一に考えなさい。お客様あっての羊華堂ですから」

これが日本に伝わる商売の心得だと思う。私は古いと思われてもかまわないから、この精神を受け継ぎたい。