先日、今年の芥川賞と直木賞が発表になった。この発表を聞くと、もう1年が経ったのかと驚く。
昨年、直木賞と山本周五郎賞をダブルで受賞をした熊谷達也氏の記事が、元旦の「三陸新報」に出ていた。仙台出身の熊谷氏は、教員として私の母校・気仙沼中学校で3年間を過ごしたそうな。
「私が気仙沼の子どもたちに強く感じたのは、東北の田舎には珍しく、意思表示が実にはっきりしている、ということでした。いやなものはいや、とはっきりいう。土地の言葉で表現すれば、「おら、やんた!」という否定や拒絶の言葉が、それはもう1日のうちに何度も飛び交うのがあたりまえ。」
そうなのです。そういう土地で私は育った。話はこう続く。
「言葉がきついだけでなく、行動もけっこう荒っぽい。まあ、わがまま、といえばそのとおりなのですが、裏返せば、どこへ行っても物怖じしないという、長所にもなっている」
く~、これはそのまんま私の評価と言ってもいいかもしれない。つまりは土地が培った性格だったのか。熊谷氏は、この風土を次のように分析する。
「板子一枚下は地獄という荒々しい世界に生き様を求め、体を張って行き抜いてきた海の男たちの強靭さ。あるいは長期にわたる亭主の不在を守る女たちの、たくましさやしたたかさ。たび重なる減船の危機にさらされているとはいえ、そういった漁師町に暮らす人々の精神性が、子どもたちにも連綿と受け継がれているのだと、当時を振り返ってみてあらためて感じます」
熊谷氏は「漂泊の牙(文庫本はこちら)」と「山背郷(文庫本はこちら)」という作品で気仙沼を舞台にした場面を書いているようだ。今度、読んでみようと思っている。