読書:プロ経営者の条件

「プロ経営者の条件」折口雅博・著

著者は、日商岩井(現・双日)社員だった1991年当時、伝説のディスコ「ジュリアナ東京」を企画・運営し、退職後は「ヴェルファーレ」をオープンさせる。そしてグッドウィル株式会社を起業し、株式会社コムスンを傘下におさめ、グッドウィル・グループ株式会社のCEOとして成功する若き経営者。六本木ヒルズにオフィスをかまえるヒルズ族。私と同じ1961年生まれ。

この華やかな経歴から想像したものとは裏腹に苦労があった。
父親の会社が倒産すると、それまでの坊ちゃん育ちから一変して、生活保護を受けるまでの苦しい生活を経験する。
中学生の時には高校生と偽ってアルバイトをし、高校は「陸上自衛隊少年工科学校」に入学し、厳しい訓練を受けながら勉強をする。給与が出るので、それを家に仕送りをする。著者は貴重な(そして少ない)自由時間に猛勉強をし、防衛大学校に進学する。「ジュリアナ東京」からは想像出来ない経歴の持ち主だった。気仙沼でヌクヌクと生きていた私は複雑な思い。

著者は成功は「運が良かった」のではなく、なるべくしてなったと言う。著者が「センターピン理論」と名付ける理論があって、ディスコのセンターピンは「いつも賑わっている」こととして徹底した。そうして大成功へ。

しかしながら、「ジュリアナ東京」が大成功したにもかかわらず、著者は4000万円の借金を背負うことになる。その借金は7000万円にまで膨らむ。普通ならば、ここで挫折するだろう。しかしながらこれを乗り切るところがすごい。

コムスンは、13の拠点から一気に1200までに増やすことに成功した。その「スピード」については「完璧症候群をなくす」としている。9割出来てから次へ行くのではなく、7割の出来で次へ進むという理論。他にも随所に「スピード」に関する考え方がある。

著者が「介護ビジネス」に参入した時に「(あのジュリアナ東京の人が)それは、またどうして?」と思ったが、それは父の介護にあった。私も経験したが、介護が必要な人であっても、(家族以外の)他人の前ではシャンとしようとする。家族には甘えてしまう。家族は介護による疲労が蓄積され、悪循環に陥る。「介護をビジネスにするのは難しい」言われるが、介護ビジネスは必要なことだと私も思う。いろいろと考えさせられる1冊だ。

読書:ソニー本社6階

「ソニー本社6階」竹内慎司・著

ソニーは日本のベンチャー企業を志すものにとって、あこがれのブランドである。そのソニーが、このところ良い話を聞かない。つい先頃は、SONY BMGのCDに搭載された「rootkit」問題が広がっている。マイクロソフト社もこの対策に乗り出し、今後、どのようになっていくのか動向が気になる。

ソニー本社6階の「経営企画部」に配属された著者が、「なぜ、ソニーがこうなっていったか」を冷静に分析して提言している。

ソニーは創業者が「自由闊達ニシテ愉快ナル理想工場」と掲げた。なんとも魅力的な言葉だ。著者はこの言葉に魅せられて就職を決める。競争率の高いソニーには、著者のように優秀な人が大勢、採用されただろう。
しかしながら、ソニー生え抜きの上司よりも、中途採用された上司の言葉が著者の心に残っているというのは、なんとも皮肉な話に聞こえる。

私たちがソニースピリッツとして尊敬していたものは、創業者とともに消えてしまったのだろうか?
いや、そうは思いたくない。
けれど、後々までスピリッツを受け継いでいくことが、いかに大変かということはわかる。

以前読んだ「内側から見た富士通「成果主義」の崩壊」も今回の「ソニー本社6階」も、著者はその企業を愛している。だから、単なる暴露本ではなく、「再生して欲しい」という気持ちが出ている。企業も生き物であり、時には病気もする。その回復力を付けるために日々、精進しなければならないのだと強く思う。

もう一つ、、、本当にその企業のことを愛しているならば、内側から改革をすべきだと、私は思う。私はサラリーマンの経験がないから、呑気にそんなことを言えるのかもしれない。それはわかっている。それでも、改革は内側から起こささないとダメなんだ。

読書:下流社会

「下流社会」三浦展・著。

この本でいう「下流」は「下層」ではないそうだ。つまり食うや食わずの生活ということではなく、「中の下」という意味で使ってるようだ。うーん、曖昧な感じもするが。「上流」も「中の上」程度にしているようだ。ところで私は何でしょ?
まぁ、「中の中」ってとこかしら? ちょっと甘くして「中の上」でもいいかしらん?

「上」には、こういう人多いとか、「下」には、このような人が多いといった分析が延々と続く。最初の方はおもしろがっていたが、だんだん飽きた。最後まで読むのはちょい辛かったが、最後の方のまとめを読めば、まぁ、そういうものかとは思う。

ところで、「上流社会」ってどんなんでしょね?(身近にいないのでわからない(^^;)

先日の清子様のご結婚のTVをなにげなく見ていたら、自分の両親へのお別れ会として「小さな音楽会」を催したらしい。音楽家を招いて、親子で楽器を演奏して楽しむ。こういうことが上流だろうと思う。お金がある/なしの尺度ではなく、名だたる音楽家を家に招き、母がピアノを弾き、父がチェロを弾く。普通の家庭では、そういうことは難しいよね(ツーか、名だたる音楽家に知り合いがいないシ)。

読書:検索エンジン戦争

「検索エンジン戦争」ジェフ・ルート、佐々木俊尚・著。

著者の2人はInternet Watchに「そこが知りたい!検索エンジンの裏側」を連載している。そういったことをベースにして、あらたに書き下ろしたのがこちらの本。検索エンジンはほんの数年前に誕生し、あっという間に(インターネットを利用する者達の)必需品になった。その検索エンジンをめぐる熾烈な争いは読み物としてもおもしろいが、Webを仕事としている者にとっては、目を離すことが出来ない重要な要素。
これまでの変遷を振り替えることで、未来の予測が出来ていく。Webに関係する人には(そうでない人にも)楽しめる本だ。

読書:人生は数式で考えるとうまくいく

「人生は数式で考えるとうまくいく」大村あつし・著

「過去10年間でもっとも成功したITライター」が書いた本。文章のテンポが良い。著者には失礼だが、その失敗談の持って行き方がトホホだけれど惹き付けられておもしろい。著者のページはこちら。

数式はいくつかある(タイトルからイメージするほどは数式は出てこない)。
例えば次の通り。

・目標 – 現状 = 課題
・なりたい自分 – いまの自分 = 課題(これからやらなければいけないこと)
・知識 × 経験 = 知恵

心に残った言葉は次の通り。
・著者が東洋医学の先生から言われた言葉
 「涙は心を癒します。笑いは免疫力を高めます」
・「過去と他人は変えられない。しかし、未来と自分は変えられる」
・著者の友人が行った言葉(三種の神器は世の中の流れで変わるが)
 「成功をつかむために必要な、永久不変の三種の神器がある。
 それは「失敗」「反省」「勇気」

読書:社長業 実務と戦略

「社長業 実務と戦略」牟田 學・ 著

「まえおき」に「社長業の第一の心構えは、まず強い独立不羈(ふき)の精神を持つことである。しかも持続して永く持つことが肝腎なのだ。」とある。

「独立不覊」だけでも強い言葉だが、その前に「まず強い」と付き、その後に「しかも」と続くことから、本当に強い精神力を問われている、と思う。
そこへいくと私は軟弱だわね。
「まえおき」は「独立不覊の精神を失い、他人に依存する心を持てば、それが社長自身にとって最大の敵となる。」で締めくくられている。
敵は我にあり、っスね。

タイトルと中身の長さがほどよく、文章は簡略にまとまっていて読みやすい。
社長としてやらなければならないことが的確に書いてある。
ただ、私にとっては周知のことが多く、新鮮さに欠けた。この手の本を多く読みすぎたのかな?

読書:道をひらく

「道をひらく」松下幸之助・著。

そういえば、、、今まで松下幸之助さんの本を読んでなかった(!)
最近は急いで本を読むことが多いのに、この本を開くと、声を出して読み上げたくなる。ゆっくりと、一つ一つをかみしめている。会社の社員をつかまえては、「ここを読んでみて」と読ませたりしている。
いい言葉が多い。というか、いい言葉だらけ。身にしみる。
お商売の神様のお言葉は深いですのー。

「昔は、いわゆる止めを刺すのに、一つのきびしい心得と作法があったらしい。(中略)おたがいに、昔の武士が深く恥じたように、止めを刺さない仕事ぶりを大いに恥とするきびしい心がけを持ちたいものである。」などは、優しい文章の中にも松下氏の厳しさが見える。

「けいじめが大事」では、「朝起きて顔を洗ったら、まず仏前にすわって手を合わす。」で始まる。昔の日本はそうだったよね。それなのに今の私の朝は、ひどくあわただしく、バタバタと過ぎている。そういうことが「けじめ」に影響しているのかもしれない。

反省したり、考えたり、感心したりしている。
何度も繰り返し読みたい本だ。

読書:幻想曲 孫正義とソフトバンクの過去・今・未来

「孫正義とソフトバンクの過去・今・未来」児玉博・著

著者の執念とも思える取材に頭が下がる。膨大で丁寧な取材の数々、登場人物の数を数えたら(数えないでしまったが)相当なものだろう。これから読まれる方は数えてみてはどうだろうか。

証拠の品々についての記述は、そこにそれがあるかのように詳細だ。
この本の出版を許した孫氏だが、このような内容になるだろうと予想しただろうか?
孫氏の立場にとって、いい話だけではなく、「え? こんなことまで書いていいの?」という箇所があってドキリとする。

IT企業の設立から数年での早すぎる上場については、私はあまり賛成出来ない。アメリカ型のこの方法を、日本でも成功の証として語られるが、それは本当に成功だろうか?
このことに孫氏の存在は大きい。孫氏はこの時代の最大の成功者だ。
私もADSLの安さの恩恵に預かっていて、孫氏の登場によって、ADSLは急速に普及したとも思っている。日本のブロードバンド化が進むきっかけになった。

それはそうだと思うが、2000年9月「新日債銀」の本間社長が就任2週間で自殺した話など、闇の世界の余韻を残しつつ、この本は終わる。
「孫氏はどこに向かって突き進むのだろうか?」と想像を膨らますことにもなる。

タイトルの「幻想曲」とはうまいこと付けたなぁ。本当は「蜃気楼」と付けたいと申し出たところ、孫氏がそれに猛反対をし、タイトルを変えたらしい。

読書:人生の旋律

「人生の旋律」神田昌典・著。

神田さんの本はこれでまで数冊読んだが、今までの本と違う。
これまでは「こうすれば成功する」的な本だが、今回は「近藤藤太(コンドウ トウタ)」という実在のすごい人物のことを書いている。

トウタと会う前、その生い立ちを聞き、今の暮らし(オーストラリアと東京を行き来する88歳の爺さんの話、しかも東京ではヒルトンホテルの部屋を年間契約しているという暮らし)を聞いた著者・神田氏は「眉唾に違いない」という印象を受ける。話が出来すぎている。そんな人って本当にいるの?

ものすごいお坊ちゃまとして生まれた後、10歳で父の事業の失敗により天国から地獄に落ちる。第二次世界大戦では命からがら帰り、その後、英語をいかしてGHQで働き、商社を立ち上げて成功したと思ったら、それも失敗し、多額の借金を抱える。その借金から逃げずに働き、そうして昨年、大往生したトウタの話。

トウタが10歳の時に、事業に失敗して家族をおきざりにアメリカに逃げた父を憎んでいたのに、会いに来る父の事を拒みきれないトウタ。それなのに、トウタは自分の一人息子とは疎遠になったままのようだ。家族愛が薄い中で育った人は、愛を形にするのが下手なのかもしれない。

トウタは55歳の時に、まさかの倒産をして6,000円しか手元に残らなかった。しょうがなく百科事典のセールスマンをする。
「ハンバーガーを売るのに一番いい方法は、腹が減っている人の群れを探すことだ。そうしたらまずくて高いハンバーガーでも、行列ができるようになる。」百科事典が欲しい人を探せば売れる。で、売れた。

と、ここまで書いた後に amazon で本の批評を読むと、トウタと同世代の方の書き込みには「トウタの話はハッタリ」とある。うーん、事実はいったい何?
事実がどこにあるかは別として、元気になる本ではある。

読書:RFP&提案書完全マニュアル

「RFP&提案書完全マニュアル」永井 昭弘・著。

先日、久々にお会いしたITベンダーの社長は、この著者である株式会社イントリーグの社長・永井氏。
始めて永井さんにお会いしたのは、永井さんが IBM を辞めてイントリーグに入社した頃で1992年だと思う。当時のイントリーグは Mac の会社だった。

「RFP」は「Request For Proposal」の略で、「日本IT業界では「提案依頼書」の意味で使うケースが最も多い」としている。
システム構築を依頼する企業(ユーザ)と、それを請け負うITベンダーの間で意思疎通がうまくいかずに大変だったという事例は多い。それを回避し、より良いシステム作りをする上でのノウハウがわかりやすく説明されている。

「何を」「いつまでに」「いくらで」したいかを明確に伝えること。とは言っても、両者にはいろいろな思惑がある。そのための駆け引きをするわけだが、果たして、その駆け引きは有効なのか?という事も書いてある。

私もそれと同じ意見で、私の(そしてテレパスの)方針は「正直ベース」で進めること。そのことで話しが早く進み、全体の工程にも良い影響が出る。永井さんも同じように考えているように思う。
ユーザ側はもちろん、ベンダーにも参考になる本。

この本は日経BP社の雑誌「日経システム構築」に連載したものが書籍化になったそうだ。なお、10月26日~29日に東京ビックサイトで開催される「WPC EXPO2005」のWPCフォーラム「コンピュータ・ネットワークトラック」の28日に永井さんの講演が予定されているようだ。